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嗚呼、上野駅

 ポレポレ東中野へ『七人の刑事 終着駅の女』(日活/1965)を観に行った。ツイッターで話題になっていた…と言ってもごくわずかな映画ファンだけだろうが…作品である。どのように話題になっていたかというと…出演者やストーリーよりも1965年当時の国鉄上野駅でその殆どのロケを行い、しかもそのロケも大部分が隠し撮りと思われ、当時の上野駅構内や周辺の風俗(人びとや街並、音声等)がそのまま記録されている、テーマ音楽も何もなく一種異様な雰囲気を持った作品、これまで一度もソフト化されたことがなく、また今後もされる予定もないレア中のレア作品…とくればこれは観に行くしかないでしょう。しかも当時の鉄道風景がてんこ盛りである。ちなみに『七人の刑事』は、あの有名な「むーむー、むむむ、むむむ、むむむ、む~♩」というテーマソングでお馴染みの刑事ドラマで、これは幾つか作られたという劇場版。

 一言で言うと、なんとも不思議な雰囲気を持った映画だ。駅のホームで起こった殺人事件の犯人を捜すわけだが、その設定、動機、犯人、トリックには何の目新しさも仕掛けもない。ヒーローもヒロインも出てこない。言うなれば東北地方が未だ首都圏に収奪される土地であった頃の、故郷で食い詰めた東北人が、故郷から常磐線や東北本線に乗り、新天地を求めてたどり着いた終着駅の上野界隈で、首都圏の社会構造のなかで更に搾取され続け、社会の底辺に蹴落とされる。今回の被害者の女性だけでなく、犯人に仕立て上げられて死ぬチンピラ(平田大三郎)も、暴力団組織から売春を強いられていた女(笹森礼子)も、失踪した娘を捜して上京する老婆(北林谷栄)も、みんな首都圏に夢や希望を収奪された東北人なのだ。

 七人の刑事は真犯人を逮捕することはできたが、濡れ衣を着せられたチンピラを救うことはできず、チンピラと故郷に帰るはずだった女を地獄から救い出すこともできなかった。絶望しきった女は無表情でまた新たな地獄を探して雑踏へと消えていき、老婆の娘はいまだに見つからない。上野駅には次から次へと東北から新天地を求めて東北人が上京し、その大半が夢破れ傷ついていくことが暗示される。七人の刑事は、上野駅構内に設けられた捜査本部で、憔悴した表情で冷や酒をあおりスルメを齧る。上野駅に集まる人びとのインタビューとおぼしき切ない声が画面に重なり映画は終わる。爽快感も何もない。陰影の濃いモノクロ映像が、ただただ都会の絶望感を際立たせる。

 芦田伸介、堀雄二、菅原謙二、佐藤英夫らお馴染みの面々に加え、今回は八人目の刑事とも言うべき大滝秀治(!)が加わって良い味出している。その他、草薙幸二郎、梅野泰靖、三崎千恵子ら名傍役が出演。

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