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気の毒なギリヤーク人

チェホフの『サハリン島』(中央公論社)を読んだ。

その前に暫く積ん読だった、チェホフの『シベリアの旅』(岩波文庫)を読んでから、それじゃ次は『サハリン島』を読もうかなと近所の図書館で借りてきた。『サハリン島』は、チェホフがはるかモスクワからシベリアを横断し、当時のサハリン島を歩いたルポルタージュである。19世紀末のサハリン島は流刑地であり、かれらを収容した刑務所は劣悪な環境であった。チェホフはその劣悪な環境と、流刑囚たちの悲惨な状況を克明に記録し、後にチェホフのルポが発表されるや驚きと賞賛の目で迎えられたという。

『サハリン島』の前段でもある『シベリアの旅』にも描かれているように、果てしない密林(タイガ)に埋め尽くされたシベリアも、極寒のサハリン島も、当時のモスクワ市民にとっては想像を絶する場所だったのだろう。華やかな都市の生活がまるで夢物語のような辺境の地、そこに暮らす人々はどうすることもできない自らの人生に諦観している。ま、それも作家の視点で描かれていることであり、そこに暮らす人々は意外とあっけらかんとしていたのかもしれない。

ぼちぼち読み進めていくうちに、ある日書店で岩波文庫の『サハリン島』がポップとともに並んでいるのを見かけた。おや、チェホフ・ブームなの?と思ったら、どうやら『1Q84』のなかに「気の毒なギリヤーク人」という段があって、その元ネタがチェホフの『サハリン島』なのだという。ま、新潮文庫でもチェホフのショートショート集が刊行されたりして嬉しかったりはしたが、チェホフ・ブームというより古典ブームなんじゃないのか?

例の光文社文庫古典新訳文庫効果がじわじわと浸透してきたのではないか、と思う。更に言えば、筑摩書房が立て続けに出していた、ちくま文庫版個人全集からかもしれない。新潮文庫は「掘り出し物」とか「おとなの時間」というマニアックなことをやっていた。角川文庫も角川クラシックスシリーズを刊行しているし、文春文庫でも芥川龍之介や太宰治を新編集で出したり、まあ団塊世代狙いと言えなくもないが、もともと岩波文庫のように、東西の古典を手軽に読めるのが文庫本本来の姿なのだから、今さら驚くことでもないか。やはり古典が連綿と受け継がれ読み継がれていくためには、それなりに出版する側の意欲と息の長い戦略が必要なんだな。

ちょっと気になるのは、『1Q84』の読者がギリヤーク(Gilyak)…現在はニブフ(Nivkh)と呼ばれるシベリアの少数民族に興味を持ち、そして今後はシベリヤがブームになるのだろうか? そして漂泊の舞踏家ギリヤーク尼ヶ崎がいちやくブームになるのだろうか…なるわけはないか…そういえば、ギリヤークといえば伊福部昭だ。たしか伊福部昭はギリヤーク人の音楽を採集したか、かれらをテーマにした曲を作っていた筈だ。宮沢賢治の詩にもギリヤークということばが出てくるものがあったと思う。『サガレンの八月』っていう作品(サガレン=サハリン)もあったなあ。いろいろ繋がるなあ、ギリヤーク…現在はニブフですが…

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