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空に向かって立つ梨の木

内堀弘『ボン書店の幻 モダニズム出版社の光と影』(ちくま文庫)を読む。

「1930年代、自分で活字を組み、印刷をし、好きな本を刊行していた小さな小さな出版社があった。著者の顔ぶれはモダニズム詩の中心人物北園克衛、春山行夫、安西冬衛ら。いまその出版社の記録はない…」という惹句が読書欲をそそること夥しいではないか。しかも著者は古書マニアには有名な『石神井書林』の店主でもある内堀弘。これは読まずにはいられない。

カバーに配されているボン書店の刊行物の装幀がなんとも昭和モダニズムの香りに溢れてセンスが良い。ボン書店の経営者は鳥羽茂。故郷岡山で中学生の頃から詩作を始め、上京して慶応義塾に学ぶも中退してボン書店を興した。出版社といっても鳥羽と妻ふたりだけという殆ど家内制手工業である。北園克衛や安西冬衛という、現在でも親しまれている詩人たちの詩集を刊行した鳥羽茂のポリシーは、自分が出したい本を出す、というその一点であったろう。まさに出版人の理想郷であると同時にいずれ経営が行き詰まることは明々白々だ。

内堀弘は殆ど知られることがないボン書店の関係者を丹念に訪ね歩き、鳥羽茂が出版した趣味の良い本を求め続けこの本を上梓した。一人の理想に燃えた若き文学青年の光と影、ドラマは戦前の東京と岡山を彷徨う。そしてまさにドラマのようなエピローグ。本好きなら読まねばならない一冊だと言えよう。

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