2020年9月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30      
フォト
無料ブログはココログ

最近のトラックバック

« 国慶節に想う | トップページ | 藝術の秋 »

この素晴らしき世界

寥亦武著;劉燕子訳『中国低層訪談録 インタビューどん底の世界』(集広舎発行 中国書店発売)を読む。


開催前から何かと騒動続きの北京五輪もめでたく閉幕。開幕式のイベントは練りに練られた演出で世界を沸かせた。後になっていろいろとヤラセがあったことも発覚したが、まあ中国ならそんなこともやるだろうな、と思うのであまり不快な気にもならない。メインスタジアムの「鳥巣」に集まった世界の来賓・報道関係者・そして切符を入手できた幸運な中国人数万人が、この一大イベントをその目で観るという幸福を味わった。


でもテレビの前で観ていた世界中の観客のほうが、より五輪を楽しめたのではなかったか。その場にいるよりも外界から観たほうが、意外と的確に中国を観察できるのかもしれない。自由化が始まった1980年代からもう30年近く経ったのに、中国ってあんまり変わっていないのだ。


さて、ここ数年来の報道で知られるとおり、中国国内ではあちらこちらでさまざまな社会事件が頻発している。チベット暴動、新疆ウイグル自治区暴動、貴州での警察署焼き討ち事件など多くの市民暴動、四川大地震や長江氾濫などの自然災害、吉林省松花江有毒物質汚染などの規模の大きな環境破壊、毒入りギョウザ事件やメラミン混入粉ミルクなどの食品汚染問題、これはもう中国の伝統ともいえる官僚の汚職などなど、数え上げたら切りが無い。インターネット社会では中国語のウェブサイトを検索するだけで、それこそ毎日のようにさまざまな事件が起きていることがわかる。


ひとむかしのことを思えば中国に関する情報は比較にならないほど増えている。私が学生だった頃、中国情報を知るためには、人民日報と北京放送、友好的な一部の機関紙ぐらいしかなかったが、インターネット社会の急速な発展により個人レベルでの情報が容易に届くようになってきた。中国は世界有数のインターネット規制国家だが、それでも毎日さまざまな情報が発信され続けている。まさに「上有政策、下有対策(上に政策あれば下に対策あり)」


いまでは少なくなったのであろうが、ちょっと前までは中国人を理想化する日本人が多かった。曰く中国は四千年の歴史を有し、深山幽谷に分け入れば水墨画の世界が広がり、シルクロードには悠久の歴史がいまもなお息づいている。中国人民はみな質素だが誠実な人々で早朝の公園ではゆったりと太極拳を舞っている。中国の若者はみな純朴で優しく年長者を敬い、日本の若者が失ってしまったものがここにある。老人たちは決してあせらず悠然と一日を送り、まさに大人(たいじん)の気風あり・・・・いやマジメにこんなことを言う日本人がたくさんいたのだ。


日本の知識人も中国政府のお膳立てのなかで人民中国を礼賛し、欧米の知識人もまた然りだった。Anna Louise Strong の『 The Rise of the Chinese People's Communes 』(邦訳『人民公社は拡がり深まる』)』や、Arthur W. Galston の『 Daily Life In People's China 』(邦訳『大地に息づく「中国」~人民公社に生活して』)を現在の視点から冷笑するのはたやすいが、それでも当時の中国は「鉄のカーテン」ならぬ「赤い未知なる国」だったのだ。


私も最初はこんなイメージを持っていたのだが、実際中国に行ってみるといやはやどうして、心優しい純朴な中国人もそれはそれはたくさんいるけれど、日本人が裸足で逃げ出すほどに大雑把でがめつく、乱暴で狡猾で非情で腹黒い中国人もそれはそれはたくさんいる、ということがわかり、なんだかとても安心してしまった。そりゃそうでしょう。国民がみな誠実で優しくて・・・・などという社会のほうが胡散臭い。


本書は反動詩人・作家として知られる寥亦武が、一般的に知られることの少ない「中国社会からはみ出した人たち」に対して行なったインタビューの数々を記録した稀有な一冊。


浮浪児/出稼ぎ労働者/乞食/麻薬中毒者/同性愛者/三陪/人買い/トイレ番/死化粧師/老地主/老右派/老紅衛兵/法輪功修行者/地下カトリック教徒/破産した企業家/冤罪の農民・・・・ざっと目次から拾ってみるだけでも興味は尽きない。一読三驚天下之奇書也

« 国慶節に想う | トップページ | 藝術の秋 »

中華世界」カテゴリの記事

コメント

■中国工業製品よりメラミン検出、英大手製菓企業自主回収―揺らぐ中国の「世界の工場」

こんにちは。今回のメラミン禍によって、中国の「世界の工場」としての立場は大きく揺らいだと思います。中国は一方では宇宙開発や、オリンピックの開催、先進国並の軍事費を計上するなどのことを行いながら、片方では発展途上国並のことするというアンバランスを解消しない限り、将来はないと思います。詳細は是非私のブログをご覧になってください。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: この素晴らしき世界:

» 伝統文化 [日本の文化に触れる旅日記]
伝統工芸とか、昔からのものは、ずっと守って行きたいですよね。 [続きを読む]

« 国慶節に想う | トップページ | 藝術の秋 »