古典の復権
小林多喜二の名作『蟹工船』が今年の増刷だけで累計20万部を越えたという。どうやらワーキングプア問題とのからみで20代~30代前半の世代に読まれているらしい。宮本顕治が生きていれば涙を流したことだろう。
私も人並みに大学生の頃に読みました『蟹工船』……なんか露悪的に暗い過酷な労働者の話だなあと思った記憶がある。まあ浮かれた80年代だったしバブルもすぐそこだったし“当時のフツーの大学生”としては特に変な読後感ではなかろう、と思う(苦笑)
たぶん中国語やロシア語にはいちはやく翻訳されていたはずである。私の好きな日本の小説は『蟹工船』です」と真面目に話す中国人もいた。「あなたはシャオリン・トゥオシーアルをどう思いますか?」と訊かれて、絶句したこともあった。「シャオリン・トゥオシーアル……ああ、小林多喜二かあ……どうって言われてもなあ……」
現在、『蟹工船/党生活者』(新潮文庫)と『蟹工船/一九二八・三・一五』(岩波文庫)のふたつの版があるが、装幀は断然新潮文庫版のほうがかっこいい。なんたって1929年に『定本日本プロレタリア作家叢書』の一冊として、戦旗社から発行された初版装幀をそのままカバーにしているのだ。かつてはなんだか薄暗い油絵みたいな装幀だったのでよけいかっこいい。プロレタリアアートってほんとポップでメッセージ色が強くて、私はコミュニストじゃないけど大好きだ……こういう見方は不遜なのであろうか?
しかしいまの若者が『蟹工船』に共感するというのがよくわからない。果たして共感しているのかどうかもわからないが、ほんとうに共感しているのなら日本共産党入党者が増えそうなものだが……増えてるのかな? だいたい『蟹工船』に描かれている不潔な悲惨さにどこまで共感できるのだろうか? 搾取される側の論理で共感しているのかなあ。
ま、なんにせよ古典がふたたび読まれるというのはいいことだと思う。誤解を恐れずに言えば、ね。
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