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歳末に悶絶する三冊

乃南アサ『凍える牙』(新潮文庫)
深夜のファミレスで男が突然炎上して死んだ。男の脚にはオオカミらしき獣に噛まれた痕があった。続いて天王洲アイルで若い男が、多摩川にほど近い丘陵地帯で若い主婦が、オオカミとおぼしき獣に噛み殺された。警視庁機動捜査隊の音道貴子は、相棒の中年オヤジ刑事滝沢と謎のオオカミを探す。どうやら獣はオオカミ犬らしい。そしてそのオオカミ犬を操る犯人は誰なのか? ファミレスで死んだ男はなぜ炎上したのか? 動機は何か? 被害者たちのつながりは? 一気呵成に読ませる筆力はさすが。都会を疾駆するオオカミ犬の美しさに魅せられる。後半の流れるような描写は感動的。1996年直木賞受賞作。

船戸与一『金門島流離譚』(新潮文庫)
『山猫の夏』『砂のクロニクル』などの冒険小説で知られる船戸与一が、台湾を舞台に描いたサスペンス小説。舞台は台湾と中国大陸のはざまに位置する金門島というところが渋い。台湾と中国大陸の関係を如実に体現している場所として、ここ以上の土地はないだろう。元エリート商社員の藤堂は、金門島で密貿易の仕事をしている。しかし彼の古い友人が白昼の飛行場で殺され状況は一変した。藤堂の周りに血なまぐさい人間たちが集まり始め、彼もその狂乱の渦に巻き込まれていく。もの悲しくも遣り切れぬ余韻が切ない併録の中編『瑞芳霧雨情話』も良い。臺北近郊の街、瑞芳や九分を舞台にした小説は、たぶんこれだけなのではあるまいか。

城山三郎『硫黄島に死す』(新潮文庫)
書店で立ち読みをしたら思わず惹き込まれてしまった。経済小説の大家として知られる著者のもうひとつの顔がここにある。1932年のロサンゼルス五輪馬術障碍競技の金メダリストであり、硫黄島の激戦で戦死した西竹一中佐を描いた表題作。スポーツと貴族性を体現した西中佐が、戦争という悲劇のなかで味わう苦悩を描いて秀逸。戦争を題材にして描かれた短編集なのだが、ひとつひとつが実に味わい深く、私の胸の奥にキリキリと突き刺さってくる。

最近は時刻表ばっかり読んでいるけど、ちゃんと読書もしている。それにしても読書は体力だ、とつくづく思いますね。三十代までは寸暇を惜しんでガシガシ本を読んでいたけど、さすがにだんだん読む気力がなくなってきた。いや、読みたい気持ちは満々なんですが…

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