基隆−−八堵−−瑞芳−−三貂嶺−−十分−−菁桐
臺鐵支線平渓線の主な拠点は瑞芳である。実際、平溪線に乗り入れる運行本数は七堵発−菁桐行、八堵発−菁桐行が半数を占めているが、私的には瑞芳を拠点としたい。なお瑞芳から三貂嶺までは宜蘭線なので、実際の平溪線は大華−菁桐なのだろう。

基隆から臺北へ向かう途中、線路は八堵で基隆行きと宜蘭方面行きが合流する。八堵から宜蘭方面行き區間車に乗り、暖暖−四脚亭を過ぎて瑞芳に到着。ここで11:35瑞芳発菁桐行きに乗り換える。平渓線は全長約13キロ、渓谷に沿って山間部を走るローカル線だ。瑞芳に到着したのはお昼少し前。いったん改札を出てから窓口で平渓線一日周遊券を購い、売店で環島鐵路火車時刻表を購う。
平溪線の発車までしばらく時間があるので瑞芳の街をぶらぶらと歩く。瑞芳は基隆までバスで30分。乗り継ぎ時間にもよるが、宜蘭方面から基隆に向かうとき、八堵で乗り換えるよりは比較的早く基隆に着く。基隆から人気観光スポット九分へ行くバスは瑞芳を経由するため頻繁に発着している。今回の滞在中、私は何度もこの基隆−九分−金瓜石経由路線バスのお世話になった。乗り慣れるととても便利な路線バスである。

ふたたびホームに戻る。宜蘭方面行きの列車が入線するたびに、便當(弁当)立ち売りの小姐が「べーんとー」と声を張り上げる。そう、臺灣では駅弁のことを便當(鐵路便當)というのである。國語の発音は「ビェンタン:bian dang」だが「べんとう」で通じるのだ。まだ幼さの残る小姐が叫ぶ「べーんとー」という、どこか郷愁を誘う売り声が、ローカル線のホームにこだまする。


やがて平渓線がホームに入線してきた。車体側面は銀色、正面は黄色とオレンジのツートンのDRC1000柴油客車だ。

平渓線は三貂嶺から宜蘭方面行きと分岐し、山の中へと入っていく。しばらく渓谷沿いや山間をのんびりと走り、やがて十分に到着する。電車は十分の駅の手前の商店街を走る。線路の両側に商店と民家が立ち並び、まるで都電のような世田谷線のような風景で有名。

十分は侯孝賢監督の映画『戀戀風塵』のロケ地としても知られている。島式のホームから改札まで線路を渡って行き来するのも雰囲気だ。このアングル、このホーム、『戀戀風塵』を観た方なら記憶にあるのではないだろうか。

十分では列車が通過する度にタブレット交換を行うので近くまで見物に行く。駅員さんが持っている丸い輪がタブレット。

そして電車は終点の菁桐へとすべり込んだ。菁桐は1929(昭和4)年開業(1945年までの駅名は菁桐坑)という由緒ある駅。臺灣に残る日本統治時代の数少ない木造駅舎として知られている。

平日の昼間ということもあって駅前は閑散としており、おまけに颱風6号の影響でときおりバケツをひっくり返したような雨が降ってくる。とりあえず飯でも食おうと駅前の小さな商店街を歩き、オバアサンが声をかけてきた小さな食堂に入った。
ここは楊家鷄捲という名物料理がウリだそうで、オバアサンはにかにかと笑い乍ら「ゴハン、タベルカ?」と言い、楊家鷄捲といっしょにスープかけご飯を出してくれた。楊家鷄捲は豚の挽肉などが入った餡を湯葉で巻いて油で揚げたもの。鷄肉に似ているからこういう名前なんだそうな。

雨に煙る線路を眺め乍ら黙々と食事をしているうちに雨が止み薄日が射してきた。店を出て菁桐駅附近を暫く散策してから駅に戻る。待合室も古ぼけて良い感じ。窓口の奥では駅員が机に突っ伏して昼寝の真っ最中。まあそれくらいローカル線だということだ。
やがてホームに滑り込んできたDRC1000に乗り込み十分、平溪、三貂嶺を過ぎて瑞芳に戻る。ここから八堵まで行って乗り換えるよりも、ここから基隆行きの路線バスに乗ったほうが便利なのである。瑞芳駅前のバス乗り場で地元の人たちといっしょにバスに乗り、ガタガタと揺られ乍ら基隆へ戻った。これで平溪線瑞芳−菁桐間乗車完了。
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