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新潟ロシア村の思い出

都築響一『バブルの肖像』(アスペクト)を読んだ。

この本はいわゆるバブル経済と呼ばれた時代(1986-1989)のさまざまな遺物を取りあげているが、このなかに新潟県柏崎市にあった『柏崎トルコ文化村』が取りあげられている。これは新潟中央銀行の4代目頭取だった大森龍太郎(故人)がバブルに乗じて建てまくった「外国村」のひとつで、ほかには『新潟ロシア村(笹神村)』、『富士ガリバー王国(上九一色村)』(※地名はいずれも当時)があり、いずれもすでに閉鎖されている。

県民の預金がへっぽこテーマパークに注ぎ込まれ、その挙句に新潟中央銀行は1999年に経営破綻してしまい、おかげで私の知人も職を失いたいへんな目に遭った。いまでは運良くみつかった転職先で順調に働いており、このときの話になると「いやあエライ目に遭ったよ」と笑えるまでになった。

さて、私は『柏崎トルコ文化村』にはとうとう行けずじまいだったが、実家の近くにあった『新潟ロシア村』には行くことができた。私が『新潟ロシア村』に行ったのは閉鎖される数年前のこと。実家に帰省したとき、地元の後輩とふたりでバカ話をしているうちに、ふたりとも『新潟ロシア村』に行ったことがないというので、さっそくこれから行ってみようという話になった。「いまのうちに行っておかないと無くなりますよ、絶対(笑)」

『新潟ロシア村』は当時の新潟県北蒲原郡笹神村(現在は阿賀野市)の山あいに在った。実家から車でしばらく国道290号を走り看板を頼りに山のなかへ入っていく。年末という時期でもあり車もけっこう走っているのだが、『新潟ロシア村』を目指す車は皆無。もともとこのあたりはまったく人家がないところ。車は鬱蒼とした杉林のなかを走る。空はどんよりと鈍色に曇った新潟の冬。まったく寂しいことこのうえない。

「どこにあるんだろうねえ、それにしても寂しいとこだなあ(笑)」
「あ、いま教会のようなものが見えましたよ!」

見ると確かに教会の塔が見え隠れしている。この鬱蒼とした山のなかにあるロシア教会…私たちはどこへ向かっているのだろうか。はたして無事に帰れるのだろうか。重苦しい雰囲気が車内に充満していく。

雪が積もっている駐車場には一台の車もない。『新潟ロシア村』入り口の手前に丸いプールがあったので覗いてみると、そこには1メートル以上ある大きなチョウザメが数匹、プールの底にへばりついている。そのチョウザメたちの上を色とりどりのニシキゴイがすいすいと泳ぎ回っている。私たちの脳天に軽いジャブをくらわせる、なんともシュールな光景であった。

入場料を払いなかに入るとまずはロシア土産売場があり、大小のマトリョーシカがこれでもかといわんばかりに置いてあった。階段を降りて地下へ向かうと狭い水槽があってバイカルアザラシが泳いでいた。本来ならバイカル湖でのんびりと過ごしていただろうに、何の因果かこんな極東の山あいで狭い水槽に押し込められるとは…バイカルアザラシはつぶらな瞳でのんびりと泳いでいた。

ふたたび地上にあがる。マトリョーシカ作りを体験できる工房やロシアレストランがあったがひとっ子ひとりいない。どうやら客は私たちふたりだけのようだ。さらに歩いていくとテント小屋があり『ロマノフ劇場』という看板がある。私たちが入っていくとルパシカやサラファンを着た男女のロシア人がのろのろとステージに現れた。「客が来たからいっちょうやるか」ってな雰囲気濃厚。ロシア民謡にコサックダンスという定番の民族舞踊を披露する。それはそれで面白かったのだが、なにしろ舞台には七〜八人、客席には二人。場末の演藝場だね、こりゃ。

ほかにはロシア正教の教会やマールイ美術館(「マールイ」はロシア語で「小さい」という意味)もあったが、何しろ誰もいないし寒いし日も暮れてくるし、これで失礼することした。車を走らせて山を降りる。バックミラーに映っていたロシア教会はすぐに見えなくなり、車はふたたび鬱蒼とした杉林をくねくねと走って山を降りた。

「いやあ…凄いとこでしたねえ(苦笑)」
「あれじゃあもうつぶれるのは時間の問題だな」
「そうですね、来てよかったなあ」
「あのチョウザメ、どうなるんだろうね」
「バイカルアザラシもですよ、まったく(苦笑)」

それからわずか半年後、新潟ロシア村は財政難が問題になり、数年後に閉鎖されてしまうのであった。

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