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犬神家の一族

『犬神家の一族』を観てきた。

私は1976年に製作された市川崑〜石坂浩二版『犬神家の一族』(以下、前作)の大ファンで、いつでも頭の中でまるごとリプレイできるくらい大好きだ。今回は実に30年ぶり(!)のリメイクということで、この話題が発表されてからいままでずっと楽しみにしてきた。リメイクと言っても監督も主役も同じだし、前作でも名演技を披露した橘警察署長こと加藤武も「リメイクというよりニューメイク」と言っている。

前作の素晴らしさと言っても30年のうちに何人もの名優がこの世を去っている。富司純子が高峰三枝子を超えられるのか? などという議論は意味がない。例えば前作で犬神佐智を演じた川口恒はパッとしない役者だったが、評価が定着している前作という作品全体において「佐智は川口恒」という評価(というか認識)をされている、と考える。つまりその役者が名優であれどうであれ、その作品のなかではずせないパーツ、あの役はあの役者じゃなくちゃね、ということになるのだ。ストーリーはみなご存じだろうし、ネタばらしは御法度なので、ここでは前作と新作の役者比較をしてみよう。

主役の金田一耕助は石坂浩二。前作から数えてたっぷり30歳は老けている。一見して「歳とったねえ」というのが正直な感想。走るシーンがつらそうだった(苦笑)。それでも円熟した金田一耕助を観ることができるのは犬神ファンとしては嬉しいかぎり。

石坂浩二と同じく前作に引き続き出演しているのは加藤武。しきりに粉薬を飲み(これは映画では言及されていないが犬神製薬の薬だろう)、難事件捜査の随所で「よおし、わかった!」と先走る県警の署長である。石坂浩二も60代だが加藤武はすでに80歳を超えている。前作と同じ演技や雰囲気を求めるのが無理というもの。印象的なギョロ目も影をひそめ、声にも張りが無くなっているけど、さすがに大ベテランだけあって、観ているだけで嬉しくなってしまう。

犬神家の秘密を知る大山神官を演じる大滝秀治に至ってはもう90歳近い。画面で観られるだけで僥倖であろう。常に変わらぬ飄々とした演技は涙モノ。

上記3人は前回と同じ役を演じているが、前回とは違った役で出演している人もいる。前作で犬神三姉妹の三女・梅子を演じた草笛光子は、前作で岸田今日子が演じた盲目の琴の師匠を演じている。こういうのはやりにくいだろうなあ。岸田今日子はご存じ個性派中の個性派。その彼女が演じた盲目の琴の師匠というこれまた個性的な役を演じるのである。それでも印象はズバリ「巧い!」のひとこと。

同じく犬神三姉妹の次女・竹子を演じた三条美紀は、前作で原泉が演じた犬神松子の母・お園を演じている。原泉(故人)も個性派中の個性派だ。原泉とは違って実にあっさりとした出番なので比較も何もない。みすぼらしい老婆の扮装だったし、本人もすっかり老けていたので、一瞬、北林谷栄かと思った(笑)

悲劇のヒロイン野々宮珠世は松嶋奈々子。前作は島田陽子が演じていた。どちらも清楚で理性的な美女という設定なのだが、まあこれはどっちもどっちということになるかな。島田陽子の雰囲気と松嶋奈々子の雰囲気はぜんぜん違うし、どちらが美しいかと言ってもタイプが違うからなあ。だいたい私はこの野々宮珠世って女がどうも好きになれない。

そして犬神三姉妹…今にして思えば前作は、高峰三枝子〜三条美紀〜草笛光子という王〜長嶋〜末次という黄金のクリーンアップというか、ゴジラ〜モスラ〜ラドンという怪獣大行進というか…凄い女優陣だったなあ。

長女・松子は富司純子。前作は大女優の高峰三枝子(故人)が演じた重要な役どころだ。何しろ前作での高峰三枝子は風格も体格(失礼)も迫力満点、彼女が発する「凄み」は時に観客を慄然とさせた。ところで富司純子は細身だが、実は原作の松子に近いのである。そして富司純子が高峰三枝子と決定的に違うところは、その艶やかさ、色気という部分なのだ。何があっても動じない鬼女のごとき高峰三枝子も凄いけど、強靱な意志のなかに崩れ落ちそうな弱さを秘めた母親、という演技が良い。お約束の血まみれシーンもどこか色っぽくてよかった。

次女・竹子は松坂慶子(前作は三条美紀)。かつてのスレンダーぶりは何処へやら、すっかりふくよかになってしまった松坂慶子だが、息子を殺されて狂乱する母親の演技はさすがに堂に入っている。

三女・梅子は萬田久子(前作は草笛光子)。竹子に比べて理性的な梅子を巧く演じていたが、如何せんこの人、演技が硬い。息子を殺されたときの狂乱ぶりは、前作の草笛光子のほうが巧かった。(続く)

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川口晶だから

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