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夏の読書

中国行きの準備も兼ねて読売新聞中国取材団『膨張中国』(中公新書)を読んで予習した。読売新聞というとどうしてもプロ野球と“あの社長”のイメージが強すぎるが、メディアとしてはなかなか良い取材をしているという印象がある。天下の朝日はエリート臭をぬぐい切れないし、毎日は全体的にインパクトが弱い。産経は確信犯的右派なのでこれはこれでいいと思う。日経はビジネスマンじゃないのでよく知りません。ここに書かれている情報は、インターネットでだいたい知っていることだったが、あらためて本というかたちで読むとまた違った取込み方ができる。思わぬところで電子媒体と紙媒体の違いを感じさせられた。

帰国してから劉文兵『中国10億人の日本映画熱愛史』(集英社新書)を読んだ。いままでに私が経験してきた中国における日本文化の受容のタイプと背景がよく理解できた。日中関係が良好だったこのときによりよい国交を結んでおけば、いまのような捻れた状態をかなり回避できたのではないか。まあそのとき日本はバブル経済に向かってまっしぐらだったから、そんな謙虚なことはできなかったのだろう。ああ、これは事前に読んでおけばよかったなあ、と思ったのが相原茂『話すための中国語』(PHP新書)旅先のあちこちでいろいろと起ったトラブル……だいたいが私の無知によることだったが、やはり浦島太郎だったことを痛感。

中薗英助『何日君再来物語』(河出書房新社)は、近代中華文化圏における藝能史研究の嚆矢ともいえる古典的名著。「ホーリーチュンツァイライ」とか「いつの日か君また帰る」という呼び方で知られる「何日君再来」が作られた歴史を遡る。李香蘭(山口淑子)、渡辺はま子、黎莉莉、テレサ・テン……錚々たる名花たちに歌い継がれたこの曲を、最初に歌ったのは周旋(ただしくは王へんに旋)、1930年代の中国歌謡の名花とうたわれる伝説の大歌手。この本が書かれた当時(1980年初頭)にはまだ存命だった作詞者と作曲者に手紙で問い合わせをしたり、中国返還などはるか先のことだった香港の友人を通じて情報収集をしているところが時代を感じさせる。著者が中華街の小さなレコード屋で香港や臺灣製のカセットテープを買うくだり、ここは当時のアジアンポップス愛好家にはお馴染み「発三電機商会」だ。カセットテープとアナログレコードに埋もれていた小さな店も、今じゃあたりまえだがCD、DVDばっかり。

林芙美子『北岸部隊 伏字復元版』 を読む。日中戦争開始当時、戦時下の民論昂揚のため、内閣情報局の命により多くの作家たちが戦場に赴き、内地の雑誌や新聞に戦地のルポを送り続けた。林芙美子もそのひとりとして上海に入り、ある部隊とともに漢口(現在の湖北省武漢)を目指す。一読して無邪気な女性作家の中国観が横溢しており、現代の視点からみると差別的な文章が頻出している。批判されてもしかるべき従軍記だが、まあ当時の日本人の中国観はおしなべてこのようなものだったのだろう。むしろ変に自分を繕わずに堂々と「私は兵隊が好きだ」「中国兵は気持が悪い」などと書く林芙美子は正直な人だと思う。女は強し。

上原善広『コリアン部落 幻の韓国被差別民・白丁を探して』(ミリオン出版)を読む。在日韓国・朝鮮人差別、同和問題という根深い差別はいつ果てるともなく続いている。被差別部落出身の著者は、さらに韓国における被差別民・白丁(ペクチョン)の存在を確かめるために韓国を歩く。「無かったことにしてしまえば差別など無くなる」という韓国人の意識には正直とまどってしまう。どうやら韓国では人権意識が低いようだ。まあイケイケドンドンの高度経済成長時期の国だから、過去の暗部を捨て去っていかざるを得ないのだろうが、それにしても過去の侵略者に対する反日意識・反日運動は途切れない。このへんがいまいちよくわからないところだ。著者の正直な筆致が強い印象を残す佳作。

長山靖生『「人間嫌い」の言い分』(光文社新書)近代大衆文学やSF小説研究で知られる長山靖生は、最近は家族問題、若者問題に対して発言が増えている。他人とのつきあいが苦手な私としてはなかなか興味深い一冊。子どもの頃から“仲間とつるまない”という生き方を自分で発見・実践してきた私は、長山氏に言わせればじょうずに生きてきたと言えるのだろうか。いまの子どもたち、みんなと仲良くしなければいけません、という脅迫などに負けてはいけないぞ。ところが人間嫌いを実践していると異性とのつきあいが苦手になってくる。酒井順子『負け犬の遠吠え』以来、30代未婚女性問題がブームになった。結婚しない女性たちの問題は以前から問題にはなっていたが、30代未婚男性問題についてはあまり言及されてこなかった印象がある。もっとも近年、大久保幸夫・畑谷圭子・大宮冬洋『30代未婚男』(NHK出版)のような本の出版が最近目立ちはじめ、ようやくこれで30代男女の未婚・非婚問題がセットで語られるようになった、などと私がシャアシャアと書いている場合ではないのだが(苦笑)。30代未婚女性なんて珍しくもなんともないこの時代、いま最も力のある女性作歌のひとりが絲山秋子。芥川賞受賞作『沖で待つ』、最新エッセイ『絲的メイソウ』はひさびさのヒット。パトリック・マシアス『オタク・イン・USA 愛と誤解のAnime輸入史』(太田出版)のように、アメリカにおけるオタクたちも受難の歴史を生きてきた。フジヤマとゲイシャガールとスキヤキとアニメで知られる極東の小国に果てしない憧れを抱く在米オタクの熱い思いが横溢する一冊。

同世代による同世代向け・若者向けの本ばかり読んでいてはいけないので、おとなの本も読みましょう。というわけで東海林さだお『偉いぞ!立ち食いそば』(文藝春秋)を読む。東海林さだおの立ち食いそばに向けられる情熱はファンにはよく知られている。立ち食いそばの名店「富士そば」チェーン社長との対談が面白い。わたしは富士そばにはあまり行かないのだが、こないだ富士そばに入ってみると、店内にこの本の小さなポスターが貼られていた。畏るべしショージ君。エッセイストとしても知られる俳優・池部良『風の食いもの』(文春文庫)は、戦前から戦後にかけての日本人の食生活が丁寧に描写されて面白い。とうとう落語協会会長に就任してしまった鈴々舎馬風『会長への道』(小学館文庫)。初版はまだ会長に就任していない1996年に刊行されているが、2006年の会長就任に合わせて今回加筆訂正されて文庫化された。中学生の頃、傑作爆笑落語「会長への道」に転げ回って笑っていた私としては、とうとう馬風師匠が落語協会会長に就任した事実に隔世の感もひとしお。同書329pの新旧会長2ショットは爆笑モノ。

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