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立川談春独演会

仕事を終えてさっさと桜木町へ向かう。みなとみらいとは反対側、野毛方面にとぼとぼと歩いて、馴染みの横浜にぎわい座へ。今夜は立川談春独演会。にぎわい座の番組は談志と志の輔以外はいつも当日券で入れるので嬉しい。とはいえ桂歌丸師匠の『牡丹灯籠』通し公演はみごとに完売。ま、歌丸師匠はハマっ子だからネ。いやいや、人気と実力のなせるワザでしょう。客席は九分の入り。さすがに一階席は完売、売店で甘納豆を買って二階席に座って開演を待つ。

今夜の演目
立川談修 『転失気(てんしき)』(前座)
立川談春 『天災』『妲妃のお百(だっきのおひゃく)』

立川流の藝人はおしなべて基本に忠実、という印象がある。談修もいかにも前座らしいきちんとした高座をつとめて好感が持てた。志の輔、談春、志らくは言わずもがな、快楽亭ブラック(今では元弟子だが)も破天荒な藝人と言われているが、きちんと古典を演じられる技倆はちゃんと持っている。立川談志は真面目な藝人なのだ。

談春はマクラで自分の母親が談志に挨拶に来たときのエピソードを淡々と語り客席の爆笑をとる。「ウチはキチガイの家系ですからね(笑)」とネタ振りをし乍ら『天災』に入る。

この噺は談志の得意ネタ。ふむふむ、愛弟子談春が師匠にどうやって料理するのか楽しみ。女房と母親に三くだり半をつきつけようという乱暴者の八五郎と、心学のセンセイ紅羅坊名丸が繰り広げる珍妙な問答。ふつうは乱暴者の八五郎が、紅羅坊先生の理屈にぐうの音も出なくなるという演出なのだが、談志の『天災』は八五郎が屁理屈をこねまくり、常識派の紅羅坊先生が押されっぱなしになる。このときの談志の屁理屈ぶりが凄い。調子のいいときは狂気の世界から狂気を広めに来たような凄みが出る。談春の八五郎は談志とは違って(あたりまえだ)本能だけで生きているような男。これはまたこれで面白い。

二席目はマクラ無しで『妲妃のお百』、歌舞伎、講談でお馴染み、これも師匠の十八番だ。おお、本寸法の高座が聴けそうで楽しみ。

妲妃のお百と徒名された希代の悪女こさん。豪商の夫を手にかけ、大名の後添えにおさまってお家を傾け逐電。深川でひっそりと暮しているある冬の日、家の前に門付の親子がやってくる。盲いた母親の峰吉は元深川の売れっ子藝者だったが、今ではすっかり零落して乞食同然。情をかけたこさんは峰吉親子を家に引き取り、峰吉を小石川の療養所に入所させ目の治療をしてあげる親切心をみせる。ところがこれがとんだ悪企み。峰吉と娘を引き離したあとで悪党仲間と芝居を演じて、娘を吉原の女郎屋に売り飛ばしてしまう。そうとは知らぬ峰吉は、一目娘に逢いたいと矢の催促。こさんは峰吉を家の二階に閉じ込めてろくに食事も与えない。骨と皮ばかりになった峰吉は、娘逢いたさの一心だけで生きる屍と化した。めんどうになったこさんは、悪党仲間の怪盗秋田小僧に、金づくで峰吉を殺すよう依頼。ある雨の夜、秋田小僧は、娘のいるところに行くと騙して峰吉を連れ出し、綾瀬の土手で惨殺してしまう。ところが、、、

談春の演じる悪女はおしなべて凄い。明日のことなんざ知ったことじゃないよ、という肚の据わったところがいっそう凄みを感じさせる。悪女ではないが、おのれの娘を借金のカタに女郎屋に取られた左官の長兵衛に向かって、博徒の了見を淡々と諭す『文七元結』の佐野槌の女将も同型。盲いた峰吉の首を力まかせに捩じ上げる殺しの場面、熱演であった。

高座を聴くたびに談春の引出しの多様さと深さに驚嘆の連続。良い気持で外に出て、野毛界隈の一杯呑み屋でサワーと煮込みをつまみに独りで酔っ払う。

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