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ケンチャナヨ!(なんとかなるさ!)

梁石日『シネマ・シネマ・シネマ』を読む。

中年の在日小説家ソン・ヨンスのもとに原作を映画化したいという怪しげな男がやってきた。みるからに胡散臭い男はソン・ヨンスの日常を引っ掻き回しあちこちから数千万円もの出資金を掻き集めて行方をくらました。これがこれから起るドタバタ喜劇の序章。

韓国人の映画監督が在日の若い女性作家の小説を映画化したいとやってくる。おまけにソン・ヨンスに主演をしてくれというのだ。わけもわからぬうちに映画主演が決まり、日韓の俳優が集められ、韓国映画スタッフが大挙して日本にやって来る。計画性のない韓国映画スタッフの滅茶苦茶な仕事ぶりに業を煮やした在日スタッフがロケ現場を仕切りまくる。韓流とは「じぶんたちのやり方が世界中どこでも通用すると思っている」という、いわば「オレ流」のことらしい。

素人俳優のソン・ヨンスは忙しい。なにしろ本業は連載を四つ抱えている小説家なのである。慣れない撮影現場で心身共に疲れ果て乍ら、宿舎に戻ると原稿用紙を前に苦吟呻吟、〆切が近づくと出版者から情け容赦のない催促の電話が入る。映画製作に関わるスタッフ、出資者、協力者、出演者の私利私欲がもうカオスのように混ざりあって、行間から物凄い勢いで読者を叩きのめす。それにしても何百万、何千万という金が借りたり借りられたり、泡のように消えていったりする様には呆れてしまう。私がのほほんと映画を観てあーだこーだと言っているが、銀幕の向う側では恐ろしいほど金がかかっているのだなあ。

こうまでして人は映画製作に人生を賭けるものなのか。映画とはいったいどれほどの文化あるいは産業なのであろうか。そもそも映画がこの世に存在する理由とはいったいなんなのか。いやあ、映画ってホントーにいいもんですねー。

現実の小説を映画化する過程をフィクションとして描いたメタフィクション。ソン・ヨンスが出演する映画『ファミリー』は実際に梁石日が主演した柳美里の 『家族シネマ』(1998韓国)。柳美里も家族の一員として出演している。小説の後半は梁石日の傑作小説を映画化した『夜を賭けて』(2002)の製作事情が描かれる。この映画も日韓共同製作として話題になった映画。それにしても梁石日の小説は相変わらずパワーがある。『血と骨』『夜を賭けて』で数百万の読者を捩じ伏せた圧倒的な迫力はまだまだ健在。

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